2010年1月8日(金) 香川旅行 1日目トランプは船の上で朝を迎えました。
神戸から高松へ向かうフェリーの船上です。
ご縁があって、今回の旅はジャンボ・フェリーさんで四国に渡ることになりました。
早朝、6時の出航。午前10時ごろに高松に着く予定です。
しばらくしてきれいな朝焼けを見ることができました。

しばらくして明石海峡大橋の下を通過。
ピレネー犬のレディーも目をさましました。

いつもは車で淡路島に渡る橋ですが、下から見るのは新鮮な感じですね。

私たちにとってもはじめてのフェリーの旅でしたが、思ったよりも快適でした。
(乗客は20人ほどで、ジャンボ・フェリーさんの採算面で少し心配になりましたが...)
ただ、犬は車からおりることができませんので、犬連れ旅行には不向きかもしれません。

高松港に着いて散歩。
うしろの船が今回お世話になった「りつりん2」です。
(この名はいうまでもなく高松の名園「栗林公園」にちなむものです。)
最近、寒い日が続いていたので、戸外で過ごすことが多い犬連れ旅行ですから寒さを覚悟していたのですが、よく晴れている割に意外にあたたかです。

この後、高松市内をトランプとレディーを連れて散策しました。
本場の讃岐うどんをいただいた後、商店街へ。
商店街では昆布や鰹節、いりこの専門店「丸一倉庫」さんで、伊吹産のいりこを買いました。
100gで550円というなかなかのお値段でしたが、そのままポリポリ食べた味は最高でした。
夕方、源平の古戦場、屋島へ。
下の写真の右端に見えるような頂上が平坦な台形の地形です。これは侵食されやすい花崗岩(かこうがん)の上に、硬くて侵食されにくい安山岩(あんざんがん)質の溶岩が乗ったためにできたものです。

屋島といえば平家物語の那須与一(なすのよいち)が思い出されます。
私〔夫〕が中学生のころに国語の課題として暗唱した一節の中でも、「(かぶら矢を)よつぴいてひやうど放つ」「(扇の的を)ひいふつとぞ射切つたる。」という部分の「よっぴいてひょうど」とか「ひいふっとぞ」とかいう部分がとくに口に快く感じたものです。
トランプ、レディーといっしょに屋島を一周しました。
歩いていると、随所に廃屋となった旅館やホテル、観光施設があるのには驚きました。
屋島ははじめて訪れましたが、このような形でいたるところから「諸行無常の響き」が聞こえてくるとは思いませんでしたね。

今夜は屋島に泊まります。
《蛇 足》
私〔夫〕は麺類が大好物です。
それもうどんは「うどんを食べるもの」、つまり上に乗っている天ぷらやアゲよりもうどんそのものに魅力を感じる麺好きです。
うどんは「うどんを食べるもの」ということを教えてくれたのは、今から30年ほど前の数年間、生野区の林寺にあった「ちからいし」という店でした。
それまでの私は、うどんの上に乗っている具が食べたいのでうどんを食べていました。
たとえば「道頓堀の今井の穴子うどんの穴子は絶品。」とか「戎橋(えびすばし)北詰の田舎そばのカレーうどんはスパイスととろみがすばらしい。」とか、おいしい具を食べるのが目的で、うどんそのものの味は二の次でした。
(これらのお店のうどんそのものの質が低いという意味ではありませんので念のため。)
ところが、たまたま入った「ちからいし」のメニューは「釜揚げうどん」だけ。
空腹だった私はしかたなく釜揚げの「小」をたのみました。
客が私一人だけだったのにもかかわらず20分ほど待たされて、出てきたのは黒い大ぶりの鉢。
中には白く濁った湯の中にうどんだけが入っています。
そのうどんを、おろししょうがを入れた昆布と鰹節の合わせだしにつけて食べてびっくりしました。
麺にもちもちと弾力があり、しかもかたくなく箸に取って引き上げるとまるでゴムのようにビョーンと弾むのです。
しばし無言で、夢中になってうどんをすすりこみました。
食べ終わるころ、店主が黒い急須に入れた「釜湯」を出してくれました。それでだしを薄めて飲むためです。
このうどんとだしのおいしさには深く感動しました。
それからは機会があるごとに「ちからいし」へ通いました。
店主が魂を入れて打つ釜揚げうどんは、春夏秋冬いつ食べてもおいしく、心から「ごちそうさま」と言って店を出ることができるものでした。
後には大根や小芋などを柔らかくなるまで煮ただし汁をうどんの上にかけた「しっぽく」もメニューに加わりましたが、それも大変に滋味あふれるものでした。
「ちからいし」のうどんが私の麺に対する眼を開いてくれました。
それからは麺類は麺そのものを食べるため、ピッツァは台の生地そのものを味わうため、そして最近では上質な米があればそれだけでじゅうぶんといっても過言ではありません。
〔妻〕「ほんまやね?」
〔夫〕「すんません、過言でした。やっぱりおかずも食べたいし、お味噌汁も飲みたいです。作ってください。」
というのは、讃岐うどんブームを巻き起こした超麺通団団長、田尾和俊さんのパロディーですが...
私は田尾さんの著作が好きで、機会があるごとに手に入れては読んでいます。
そこで今回の香川旅行でも、田尾さんがスーパー一般店として推奨しておられる高松市内のお店へ喜び勇んで行ったのですが...
私たちは食べ物を残すのが嫌いですので、無言でそそくさと食べ、しょんぼりとお店を出ました。
このお店のうどんは別の意味で「恐るべき讃岐うどん」でした。
田尾さんが「伸びる腰」の代表格としておられる麺はやわらかいばかりで腰が感じられず、上品な味と評価しておられるだしも限りなく「塩味の湯」に近いものでした。
失意の私たちが次に向かったのは高松市内にある「丸山製麺所」。
ここは香川の人たちの日常の中にある製麺所型のお店で、どんぶりを自分で取って、お店の人に玉数を言ってうどん玉を入れてもらい、うどんをテボに入れて湯だまりで温めてからだしを入れ、天ぷらなどを選んで取ってのせて食べるスタイルです。
伝統ある製麺所のうどんはおいしく、あっさりしただし汁もいりこの味を感じられて満足できるものでした。
また、私が他の天ぷらと勘違いして取った「甘く煮た金時豆の天ぷら」にも不思議な魅力がありました。
テーブルに置かれた金魚鉢を眺めながら、ようやく私たちのおなかも心も満たされたのでした。
トランプやレディーといっしょに行動していますので、今回は郊外にある「超人気穴場店」へ行くことはできませんが、うどんの聖地、讃岐の実力を知るために明日ももう一軒、うどん店を訪れるつもりです。